しのびよる〈暴力〉の影―村上春樹の分身リスト
『国文学解釈と鑑賞別冊 村上春樹 テーマ・装置・キャラクター』至文堂
分身テーマという観点から、村上春樹の解説を試みた。八〇年代の村上春樹テキストでは、分身は主体(化)のシステムで排除された主人公の失われた半身であり、この半身との出会いが、小説群の中心的な主題になっていた。ところが九〇年代以降の分身は、主体(化)のシステムに還元できない(他者性を帯びた)、人格の分裂(損傷)を強いる圧倒的な暴力の帰結として主題化されると指摘した。(p266~p269)