「文学」がみえないものとして隠蔽し〈闇〉に葬ってきたものを改めて論じ、知のフレームの組み替えを図る。全446頁。
編者:中山昭彦、島村輝、飯田祐子、高橋修、吉田司雄
共著者:飯田祐子、高橋修、中山昭彦、吉田司雄、島村輝、浅野正道、内藤千珠子、林少陽、坪井秀人、朴裕河、上田敦子、宮沢剛、石井正人、垂水千恵、吉田俊実
本人担当分:「探偵小説」が隠蔽するもの――黒岩涙香『無惨』から内田魯庵訳『罪と罰』(p27~p60)
「文学」を擁護し探偵小説批判の急先鋒であった内田魯庵が翻訳したドストエフスキーの『罪と罰』は、明治期にはむしろ反=文学的な「探偵小説」と受け止められていた。魯庵の意図と裏腹に「文学」と「探偵小説」を架橋する位置にあったと思われるのである。ならば、明治初期において「文学」と「探偵小説」の差異と同一性はどこにあったと考えられるのか。近代文学の展開を傍らから促したと思われる「探偵小説」を背後から支えていた見えないイデオロギーを、内田魯庵訳『罪と罰』をとおしながら論ずる。