ヴィクトル・ユゴー『見聞録』と森田思軒訳『探偵ユーベル』の間――〈探偵小説〉というあり方をめぐって
上智大学国文学会
森田思軒訳『探偵ユーベル』は『国民之友』を主宰していた徳富蘇峰の依頼に応じて、明治二二年一月一日から同三月二日(四三号)に連載されたものである。原文はフランスの文豪ヴィクトル・ユゴーの、Choses Vues(見聞したこと)中の一部で、この書は一八八五年のユゴーの死後に刊行された未定稿集であり、後にいう「探偵小説」ではない。この『見聞録』が「探偵小説」として翻訳されることになったのはなぜか。「周密体」と評される森田思軒訳の文体の問題とともに論じた。