このシンポジウムの主旨は、まだ研究を始めたばかりの中国の日本文学研究者に、既に八十年代に方法論上のパラダイムチェンジを経験してきた日本の近代文学研究の現状を紹介し、相互の理解を深めることにある。ここでは、明治期から現代に至るまで、多くの少年たちに愛読されてきたジュール・ヴェルヌ原作の翻訳『十五少年』(森田思軒訳)をとりあげながら、日本の近代国家が作り上られていく過程で、日本人が共有した〈冒険〉をめぐる想像力とはいかなるものだったかを示し、あわせて日本の文学研究におけるカルチュラル・スタディーズやポスト・コロニアル批評の今日的意味を提起している。