『彼岸先生』――漱石の光と影
『国文学』臨時増刊、44巻9号 学燈社
島田雅彦の小説『彼岸先生』(1992年)を、著者自身がパロディー化したとする夏目漱石の『こゝろ』を参照にしながら論ずる。それによれば、『こゝろ』に比して、小説に意図的な「謎」を仕掛ける「サスペンス」がうまく機能しているか否かというのテンションの質の差異を考慮しても、「パロディー」という作者島田の拠って立つ方法あるいは方法意識が容易に透けてしまっているがゆえに、それがテクストの予期せぬ亀裂へ入り込むというエロチックな参入を阻んでいるという問題点を指摘する。p134~p138