不如帰』の結末――「征清戦争」をめぐるメタファー
共立女子短期大学文科『紀要』50号
『不如帰』の結末には、物語の終結を示すかのような感動的な浪子の死の場面のあと、後日談ともいえる一章が付け加えられている。それを丁寧に読み進めていくと、『不如帰』の結末には「征清戦争」の〈終り〉をめぐる、まさに同時代的な〈父性〉的な想像力が関わっていたことが指摘できる。さらに、物語の〈終り〉とは、たんに物語の内的な必然性によってもたらされるのではなく、同時代の想像力と抜きさしならない共犯関係にあるということを論究した。