〈終り〉をめぐるタイポロジー――『明暗』の結末に向けて
『漱石研究』18号 翰林書房
夏目漱石の最後の小説『明暗』(『朝日新聞』大五・五・二六~一二・一四)をめぐる論考。漱石の作品の終わり方は特殊で、オープンエンド(開かれた終わり)といわれる明確な終わりでない終わりのものが多いとされる。このオープンエンドという考え方のもつ問題性を考察する。つまり、オープンエンドという〈終り〉が漱石神話の価値を担保するイデオロギーになりえている可能性もあり、オープンエンドと語ること自体にテクストを閉じられた系に囲い込むという逆説がありえると論ずる。