社会言語科学会の5周年を記念して企画された『講座 社会言語科学』という6巻からなるシリーズで各巻は1.異文化、2.メディア、3.関係とコミュニケーション、4.教育、5.社会・行動システム、6.方法となっている。第5巻は社会・行動システムについて1.「ことばとイデオロギー」、2.「言葉と権力」、3.「ことばと公共福祉」、4.「ことばと文化」、5.「ことばとインタラクション」、6.「ことばと活動空間」の6章で構成されている。
編者:片岡邦好、片桐恭弘
共著者:片岡邦好、片桐恭弘、松木啓子、阿部圭子、小山亘 他10名
第1章 ことばとイデオロギー「ジェンダーイデオロギー」を担当
言語に表れた性差の研究について(1)欧米の事情に焦点を当てて、「言語の性差研究」についての社会言語学的観点から大きく3つの潮流をとらえて概観し、次に(2)日本における「言語の性差研究」に焦点を当てた。日本の場合、欧米と最も異なるのは、日本特有の女言葉が歴史的に形成されており、欧米のような「性差」という概念でとらえられない文化が存在すること、そして日本語の文法上の特徴も女性文化形成の後押しをしたことを明らかにした。日本語は「性差」の大きな言語であるが、欧米の言語性差とは違ったとらえ方や受け入れられ方が存在する。そして最後に、(3)性差研究の近年の動向などから言語とジェンダー問題における今後の方向性を考察した。
pp.18~38