本稿では,田中昌人らの「可逆操作の高次化における階層-段階理論」における重要な概念を概説し,この理論に基づく発達診断の実践的意義について検討した.まず,以下の4つの概念が概説された.第一に,人間の発達の内的法則性を明らかにするための基本カテゴリーである「可逆操作」,第二に,発達における4つの連関の静的な把握である「機能連関」およびその動的な把握である「発達連関」,第三に,発達の質的変化を捉える「階層」と「段階」,第四に,発達の質的な変化をもたらす「発達の原動力」であった.その上で,「階層-段階理論」に基づく発達診断の意義として,検査基準では捉えられない内面性の把握が可能であること,障害事例の療育場面で見られた「気になる姿」と発達診断の結果を,発達連関の視点で分析することの重要性を示された.
pp. 178-185